アップル、諸行無常、盛者必衰
6月13日、サンフランシスコで、イベントにおいて、アメリカアップル最高経営責任者(CEO)のティム・クック(55)が「我々の目標は世界を変える製品を作ること」と訴えた。
すでに、5月には「それなしで生きていけないと思うほどの機能が新モデルに加わる」と訴えていた。
しかし、部品メーカーに伝えている生産計画の数量は現行モデル並み。
アップルは音楽の楽しみ方を変え、スマートフォン(スマホ)で人間の生活そのものを変えた。
ただ、この日の説明は、基本ソフト刷新など、既存プラットフォームの小幅改善に終始し、かつての大胆さが消えていた。
07年に登場したiPhoneの草創期は、世界で集めた最先端の部品を惜しげもなく採用できた。
それが今、新作は1億台以上に必要な量の部品を用意しなければならない。
ビジネスが大きくなって品質管理の担当者が増え、新技術の採用に保守的な態度も目立ってきた。
消費者が抱く「飽き」も現れてきた。アップルは新しいライフスタイルを提案する製品を幾度も生み出してきた。
今は、iPhoneを超えるような製品は生まれていない。
日常品化したスマホという土俵では、どんなに完成度が高くても感激は薄れる。
アップルは、有機ELパネルの調達を巡り、「韓国サムスン電子」と交渉を続けている。「資金を出すのでアップル向け専用ラインを造ってほしい」といっても、サムスンは「専用ラインをつくるより、適正価格で買い取ってほしい」と拒絶する姿勢を見せた。
有機ELパネルの世界市場をほぼ独占するサムスンの交渉力は強い。
圧倒的な購買力を背景に「イエスかノーか」と迫ったアップルの部品調達も変わりつつある。
6月13日の開発者会議で、クックは「消費者の飽き、スマホの陳腐化、そして今後は大企業病とも戦わなければならない。」と自らに語りかけているように聞こえた。
今年1月に始まった「iPhone6s」の減産は前年比3割に及んだ。前作「6」とパネルサイズが同じで機能差も大きいといえず消費者に違いを打ち出せなかった。
アップルを支えるプレーヤーは忍び寄る異変を感じていたが、深刻さは予想を超えた。
3月末発売の小型iPhone「SE」は衰退を象徴するモデルと見られている。
そういう、諸行無常・盛者必衰のサイクルをアップルは緩やかに迎えつつある。(日経新聞引用)